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東京高等裁判所 昭和25年(う)3060号 判決

被告人

林龍沢

主文

本件控訴はこれを棄却する。

理由

前略。

原判決挙示の証拠を綜合すれば、原判示の如く被告人が数日間にわたり、判示軍票を所持していたことは之を認めるに充分である。

論旨は、連合国占領軍の所属財産である米軍票を単に所有者から預つたに過ぎない場合は、昭和二十二年政令第百六十五号第二条に、所謂不法所持罪を犯したものではない。本件被告人は、占領軍兵士ローズベルトホースと称する者から、右軍票を預つたに過ぎないから、被告人は無罪たるべきものであるというのであるが、たとえ所有者から預つたに過ぎぬ場合にもせよ、数日間之が占有をするが如きは、右政令に所謂所持の事実ありとするに充分であると認むべきものである。記録を精査するも、被告人の所存につき免責の理由も発見することを得ない。よつて本件については、右政令に所謂所持はないということを前提とする所論は理由がない。次いで記録を精査するも、原審の被告人に対する科刑を以て、必ずしも量刑不当と認め難いから、結局論旨は総て理由がなく、本件控訴は棄却を免れない。

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